たけのこ派で複雑系コース所属の大学2年生が数学の力できのこ派をボコボコにした話
この記事はFUN Part3 Advent Calendar 2022 の12月16日の枠に投稿したものです。他の方が投稿された記事も是非ご覧ください。
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0. 目次
1. はじめに
みなさんこんにちは。初めましての方は初めまして。
複雑系コース2年のかすまるです。
最近は課題を徹夜で終わらせて、翌日の授業に寝坊することが日課というなかなか悲惨な大学生活を送っています。誰か助けてください。
さて、本題に入りましょう。
みなさんはきのこの山とたけのこの里、どちらがお好きでしょうか?
このような「きのこの山とたけのこの里ではどちらが美味しいか」という論争はしばしば話題に上がります。
ですが、個人的にはこの論争は話題にするだけ無駄なことではないかと考えています。
なぜかって?
たけのこの里の方が美味しいに決まっているからです。
しかし、世の中にはな ぜ かきのこの山の方が美味しいと主張する、いわゆる「きのこ派」と呼ばれる方がいます。
彼らはありとあらゆる手段を用いて、たけのこの里を愛する「たけのこ派」を迫害してきました。
例えば、2022年6月に購買で開催された「きのこたけのこ戦争」という企画でたけのこ派を迫害しました。
この企画は、きのこの山とたけのこの里をそれぞれ300個ずつ入荷して、どちらが先に売り切れるかを競う企画でした。
この企画の中で、とあるきのこ派の方がきのこの山を勝たせるために、きのこの山を100個以上買い占めるという暴挙に出ました。
その結果、たけのこの里は敗北して、9月末まで購買に入荷されなくなってしまいました。
僕はいまだにあの勝利を認めていません。
(詳しくはぽてみなこさんの以下の記事をご覧ください)
このような迫害を我々たけのこ派は許して良いのでしょうか。
いえ、決して許されることではありません。
ということで、今回は数学の力を使って、我々を迫害するきのこ派をボコボコにしてやろうと思います。
この記事を読んだきのこ派は過去の過ちを認め、謝罪せざるを得ないでしょう。
ついでに数学に対する苦手意識が少しでも減らせれば幸いです。
2. 「美味しさ」の定義
そもそも「美味しさ」とは何でしょうか。
デジタル大辞泉(2022)によると、「美味しい」とは「食べ物の味がよい。美味だ。『うまい』に比べて丁寧・上品な感じが強い。」という意味だそうです。
いまいちピンときませんね。
なので、もう少し対象を絞って調べてみます。
具体的には、きのこ派とたけのこ派はそれぞれどのような部分に美味しさを感じているのかを調べました。
明治(2020)が行った「きのこの山 たけのこの里 2020 国民大調査」によると、きのこの山とたけのこの里それぞれの最も好きな部分を選んでくださいという質問に、きのこ派はきのこの山のチョコとクラッカーの調和、たけのこ派はたけのこの里のチョコとクッキーの調和と回答していました。
つまり、きのこの山とたけのこの里はどちらもチョコとそれ以外の部分が調和することで美味しくなっていると言えます。
このことから、チョコとクラッカー、またはチョコとクッキーの比率を求めて比較することが打倒きのこ派のカギになると推測できます。
次の章では、体積、質量、栄養素という3つの観点からチョコとクラッカー、チョコとクッキーの比率をそれぞれ求めていきます。
3. きのこ・たけのこを数学的に解析
今回の解析のために、きのこの山とたけのこの里を1箱ずつ購入しました。
3.1. 体積比
まずは、体積比から求めていきましょう。
立体の体積は様々な方法で求められますが、今回は積分を用いて体積を求めていきます。
具体的には、きのこの山とたけのこの里をある曲線と直線で囲われた部分の回転体(軸の周りで1回転させてできる立体)とみなします。
このような回転体は、曲線や直線の式を積分することで堆積を求められます。
また、曲線と直線を構成するために計測したデータは以下の通りです。
- きのこの山
- :チョコレート部分の先端から底面までの距離
- :チョコレート底面の半径
- :クラッカーの長さ
- :クラッカーの半径
- :全体の長さ
- たけのこの里
- :チョコレート部分の両端の距離
- :チョコレート終端部分の半径
- :クッキーの長さ
- :クッキーの半径
- :全体の長さ
これらの値を実物に当てはめると図2のようになります。
今回は箱の中からきのこの山とたけのこの里をそれぞれ5個ずつ無作為に取り出して、データを計測しました。
計測した5個のデータの平均を取ると、各データは
※単位はすべて
となりました。
また、体積を求めやすくするため、きのこの山とたけのこの里の輪郭をそれぞれ以下の関数として扱うこととします。
- きのこの山
- チョコレート
-
\begin{eqnarray*} \displaystyle \begin{cases}y=\sqrt{\dfrac{chy_k^{2}}{chx_k}x} \qquad (0\leq x\leq chx_k) \qquad (3)\\ x=chx_k \qquad(0\leq y\leq chy_k) \qquad (4)\end{cases} \end{eqnarray*}
-
- クラッカー
-
\begin{eqnarray*} \displaystyle \begin{cases}y=\sqrt{cry_k^{2}-\left\{ x-\left( ax_k-crx_k+cry_k\right) \right\} ^{2}} \qquad (ax_k - crx_k \leq x \leq ax_k - crx_k + cry_k) \qquad (5)\\ y=cry_k \qquad (ax_k - crx_k + cry_k \leq x \leq ax_k -cry_k) \qquad (6)\\ y=\sqrt{cry_k^{2}-\left\{ x-\left( ax_k-cry_k\right) \right\} ^{2}} \qquad (ax_k - cry_k \leq x \leq ax_k) \qquad (7)\end{cases} \end{eqnarray*}
-
- チョコレート
- たけのこの里
- チョコレート
-
\begin{eqnarray*} \displaystyle \begin{cases}y=\sqrt{\dfrac{chy_t^{2}}{chx_t}x} \qquad (0\leq x\leq chx_t) \qquad (8)\\ x=chx_t \qquad(0\leq y\leq chy_t) \qquad (9)\end{cases} \end{eqnarray*}
-
- クッキー
-
\begin{eqnarray*} \displaystyle \begin{cases}y=\sqrt{\dfrac{coy_t^{2}}{cox_t}\{ x - (ax_t - cox_t)\} } \qquad (ax_t - cox_t\leq x\leq ax_t) \qquad (10)\\ x=ax_k \qquad(0\leq y\leq coy_k) \qquad (11)\end{cases} \end{eqnarray*}
-
- チョコレート
これらの式を図示すると、図3、図4のようになります。
(こうして見るとたけのこの里は思ったよりチョコ部分が多いですね。)
これらの曲線・直線を軸周りで一回転させた回転体の体積を求めていきましょう。
関数のからまでの範囲内における回転体の体積は、以下の式で求められます。
この式をきのこの山とたけのこの里を構成する曲線と直線に当てはめていきます。
ここで、式(3)から式(11)をよく見ると、これらの式は次の4パターンに分類することができます。
この中で体積を求めるために必要な式は式(13)から(15)なので、これらの式を式(12)に当てはめていきます。
範囲における回転体の体積は
式(13)より
式(14)より
式(15)より
となります。
したがって、それぞれの式に式(1)~(11)の変数や値を代入すると、きのこの山とたけのこの里のそれぞれの部分の体積は
- きのこの山
- チョコレート部分の体積
-
\begin{align} \displaystyle &V_{chk} = V_s(\frac{chy_k^2}{chx_k}, 0, 0, chx_k)-V_c(cry_k, ax_k-crx_k+cry_k, ax_k-crx_k, ax_k-crx_k+cry_k)-V_l(cry_k, ax_k-crx_k+cry_k, chx_k) \qquad (32) \\ &\simeq V_s(0.62,0,0,1.24) -V_c(0.42, 0.64, 0.22, 0.64) - V_l(0.42, 0.64, 1.24) \qquad (33) \\ &\simeq 0.67 \end{align}
-
- クラッカー部分の体積
- チョコレート部分の体積
- たけのこの里
- チョコレート部分の体積
-
\begin{align} &V_{cht} = V_s(\frac{chy_t^2}{chx_t}, 0, 0, chx_t)-V_s(\frac{coy_t^2}{cox_t}, ax_t-cox_t, ax_t-cos_t, chx_t) \qquad (36) \\ &\simeq V_s(0.31,0,0,1.78)-V_s(0.36, 0.80, 0.80, 1.78) \qquad (37) \\ &\simeq 0.99 \end{align}
-
- クッキー部分の体積
-
\begin{align} &V_{cot} = V_s(\frac{coy_t^2}{cox_t}, ax_t-cox_t, ax_t-cox_t, ax_t) \qquad (38) \\ &\simeq V_s(0.36, 0.80, 0.80, 2.34) \qquad (39) \\ &\simeq 1.32\end{align}
-
- チョコレート部分の体積
※単位はすべて
※の式のみはてなブログの仕様によるバグが発生したため左揃えになっています。
ここから、チョコレート部分とクラッカー部分、チョコレート部分とクッキー部分の体積比をそれぞれ求めると
となりました。図5は、それぞれの体積比を円グラフに表した図です。
図5からわかることは、チョコの体積が小さいように見えるたけのこの里は、実はきのこの山よりも体積が大きいということです。
いつも「たけのこはチョコが薄い!www」とバカにしているきのこ派の皆さん、今どんな気持ちですか。ねえねえ。
とはいえ、これだけではたけのこの里がきのこの山よりも優れている確実な理由にはならないでしょう。
「チョコの多さ=美味しさ」ではありませんからね。
そのため、チョコレート部分とクラッカー部分、クッキー部分の質量比でも同様に比較していきましょう。
3.2. 質量比
今回質量比を求める上で、計算を簡単にするために定めた条件は以下のとおりです。
- チョコレート部分、クラッカー部分、クッキー部分の密度はすべて一様(一部の点に偏っていない)とする。
- きのこの山とたけのこの里のチョコレート部分では全て「明治ミルクチョコレート」(図6)と同じチョコが使われているとする。
- 体積の値は先ほど求めた、、、の値をそのまま使用する。
それでは実際に質量比を求めていきましょう。
まず、明治ミルクチョコレート(以下ミルクチョコ)の各辺の長さを求めると、体積は
※厚さは低い部分が0.3cm、高い部分が0.6cmでしたので、平均した厚さを0.4cmと推定しました。
となりました。
また、ミルコチョコのパッケージ裏によると、ミルクチョコ1枚の質量は50.0gでした。よって、ミルクチョコの密度は
となりました。
これをきのこの山とたけのこの山のチョコレート部分に当てはめると、きのこの山とたけのこの里のチョコレート部分の質量、は
となりました。
また、図1のきのこの山とたけのこの里はどちらも30個入りであり、内容量(30個の質量の合計)はそれぞれ74g、70gでした。
よくきのこ派はこの表記だけを見て「たけのこは量が少ない!ボッタクリだ!」などと主張しますが、物質が持つ量は質量だけではありません。
しかも重いと持ちづらいという欠点もあります。
きのこ派の皆さんはパッケージに書かれている数値だけで判断する癖を直したほうがいいと思いますよ。
本題に戻ります。
これらの内容量から、きのこの山1個の質量、たけのこの里1個の質量は
でした。
よって、きのこの山のクラッカー部分の質量、たけのこの里のクッキー部分の質量は
となりました。したがって、質量比は
となりました。図7は、それぞれの質量比を円グラフに表した図です。
図7から、質量という観点から見てもたけのこの里の方がチョコレートの量が多いことがわかります。
さらに、クラッカー、クッキーの密度、を求めると
※バグにより以下略
となります。
たけのこの里のクッキーはきのこの山のクラッカーよりも密度が低いです。
この密度の低さが、クッキーのサクッとした食感につながっていると考えられます。
また、多くの焼き菓子においては、食感が硬すぎずやわらかすぎない、いわゆるサクッとした食感が好ましいとされています。
つまり、サクッと食感は正義ということです。
以上のことから、質量に関してもたけのこの里の方が優れていることが証明されました。
3.3. エネルギー比と栄養比
最後に、エネルギーと栄養という観点から比較していきましょう。
表1は、ミルクチョコ、きのこの山、たけのこの里に書かれている栄養素とその質量をまとめたものです。
表1 1箱に含まれるエネルギーと栄養素の量
ミルクチョコ | きのこの山 | たけのこの里 | |
---|---|---|---|
エネルギー[kcal] | 283 | 423 | 383 |
タンパク質[g] | 3.8 | 6.3 | 5.5 |
脂質[g] | 18.4 | 26.7 | 22.8 |
炭水化物[g] | 26.7 | 39.4 | 38.9 |
食塩相当量[g] | 0.065 | 0.3 | 0.4 |
ここから、エネルギーとそれぞれの栄養素についてチョコレートとそれ以外の部分の比率を計算していきます。
ただ、計算自体は質量比の場合と同じですが、これらを1つ1つ計算するのは面倒ですよね。
ここで役立つ数学の道具が行列です。
行列とは、いくつかの値を縦横に並べたものです。
たとえば、次のようなものが行列です。
このような行列同士を計算することで、複数の値を一気に計算することができます。
実際に行列を使って、カロリー比と栄養比を求めていきましょう。
ミルクチョコのエネルギーと栄養素の量をまとめた行列をとします。
ミルクチョコ1あたりのエネルギーと栄養素の量は
となります。これに次のような行列を左からかけることで、きのこの山とたけのこの里のチョコ部分に含まれるエネルギーと栄養素の量を求められます。
行列の積について、詳しくは以下の動画をご覧ください。
(ヨビノリさんはさまざまな数学に関する解説動画を上げておられるので、新入生の方は予習として見ておくことをおすすめします。1年生の前期に学ぶ内容は「解析学」と「線形代数」です。)
話を戻して、行列との積は
となりました。この行列の1行目がきのこの山1個のチョコ部分に含まれるエネルギーと栄養素の量、2行目がたけのこの里1個のチョコ部分に含まれる同様の量です。
また、きのこの山1個とたけのこの里1個に含まれるエネルギーと栄養素の量を入力した行列は
です。よって、クラッカー部分、クッキー部分に含まれる1個あたりのエネルギーと栄養素の量は
となりました。1行目がきのこの山のクラッカー部分、2行目がたけのこの里のクッキー部分に含まれるエネルギーと栄養素の量です。
質量比の場合と同様に計算すると、チョコレート部分とクラッカー部分、チョコレート部分とクッキー部分に含まれるエネルギーの比率は図8のようになります。
また、それぞれに含まれる栄養素についての比率は図9のとおりです。"Protein"=タンパク質、"Lipid"=脂質、"Carbohydrate"=炭水化物、"Salt"=食塩です。
このことから、たけのこの里はきのこの山と比べてチョコレートが持つ成分を多く接種することができるとわかります。
チョコの成分を多く含むということは、それだけチョコの味を強く感じられるということです。
また、クラッカーやクッキーは食感を楽しむものであり、味を主に楽しむものではありません。
そのため、きのこの山のようにクラッカーが占める割合が大きいと、チョコ本来の甘味や心地よい苦味が失われると考えられます。
よって、たけのこの里はチョコの味とクッキーの食感のバランスがきのこの山よりも良く、より美味しいものであると言えます。
それに加えて、1個あたりのエネルギーもきのこの山が約14.10kcal、たけのこの里が約12.77kcalとたけのこの里の方が少ないです。
そのため、たけのこの里はダイエット中に食べても罪悪感やリバウンドの危険性がきのこの山よりも少ないと推測されます。
これはもうきのこの山を選ぶ理由はありませんね。
4. まとめ
4.1. 記事全体のまとめ
ここまできのこの山とたけのこの里について数学的に比較してきましたが、いかがでしたでしょうか。
結論としては、たけのこの里の圧勝と言っていいでしょう。
これまでたけのこの里を迫害してきたきのこ派の皆さんも、たけのこ派に乗り換えたくなったのではないでしょうか。
いえ、むしろ今すぐ乗り換えるべきです。
また、今回は比較する際に積分と行列という、1年で学習する数学を用いました。
この記事を読んだことで、数学は決して問題を解くためだけに存在するものではないということがわかっていただけたら幸いです。
新入生のみなさんは、これを期に大学数学の勉強を始めてみてはいかがでしょうか。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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